断食修行の思い出

投稿者: | 2017-04-16

概要

昔、私は友人(以下、田崎)と某お寺の断食修行(3泊4日)に行ったことがあります。そこの断食修行は、野菜スープが出るとかいったカジュアル断食道場ではなくて、水しか飲めない、電子機器持ち込み禁止、持っていけるのは筆記用具やノート、仏教関連の本のみといったガチの断食修行でした。

当然めっちゃ暇になった私は日記を書くことにしました。その日記が家の押入れからひょっこり出てきたので今日は日記を振り返りながら思い出話をします。元々身内へのネタ提供として書いた日記だったので言葉が一部荒かったりします。予めご了承ください。


1日目

2/10 断食1日目 謎のキャラクター(多分自画像)「まだ大丈夫」体重:58kg

ヒマだしネタになるかと思い、日記をつけてみることにした。

午前5時半頃に田崎家を出て電車に乗り、指定の病院で健康診断(尿検査、血圧検査、聴診器だけの簡素なモノだった)を受け、その後寺へ向かった。2日程前から減食をしているので既に腹が減った…と思いきや、全く空腹感が無い。階段を昇り降りする時に少し力が入らないと感じる程度だ。

寺に着いて、世話人の方から諸説明を受けた後、敷地内を散策した。お参りをする場がいくつかあり、また、書道美術館や仏教図書館等も有った。途中、図書館へ寄っていき、マンガを数冊読んで時間を潰した。ちなみに読んだのはウラサワ直樹の「Happy!」というマンガで、兄の背負った巨額の借金を、妹の海野幸(ウミノミユキ)が厳しいプロテニスの世界に立って返済していくという話だ。まだ3巻までしか読んでいないが、登場人物の中の蝶子という人物が相当にウザい。半端ではない。あのようなウザさを感じたのは小4以来かもしれない。

図書館から帰ろうとした時に、受付のおっちゃんに、断食道場にまつわる小話をいくつか聞いた。くわしくは割愛するが、どれも私たちの心に邪念を抱かせるようなものばかりだった。

部屋に戻ってからは、この日記を書き始めながら田崎と話をして過ごした。まだ2人とも冗談を言う余裕がある。

15時になって、断食修業者が集まってのお経や礼拝の講座を受けた。お坊さんは意外にも若かった。そのあと散歩をしたが、寒いのですぐ部屋に戻った。

明日のために、部屋に置いてある時計の目覚ましの調整をしていたら気がついたが、指定の時間から2~3時間早く鳴るようだ。これに気がつかなかったら午前2時に起こされる所だった。おサイ銭いっぱいあるんだから時計ぐらい買えよ。

初日の日記です。この頃はまだイベントに参加しているようなワクワク感がありました。時計トラップについては、気がついた時はかなりヒヤヒヤしました。というのも、この断食修行、毎朝5時に朝護摩への参加が義務付けられています。護摩とは、まあお祈りの儀式みたいなものらしいです。日記を書いた時点では自画像っぽいキャラの言う通り、「まだ大丈夫」でしたが、この日の夜から頭痛がするようになります。


2日目

2/11 断食2日目 自画像「すでにつらい」 体重:57kg

座布団のような布団を敷いて、座布団のような毛布を被り寝た。掛け布団は寝返りを許さない重量感だったが、思ったよりは暖かかった。

朝5時に起床し、身の回りを軽く整え、断食修業者の日課である「朝護摩」へ向かった。昨晩からの頭痛と今朝からの吐き気でグロッキー状態である。護摩を行う本堂への道中で、2匹の黒猫に出会った。野良とは思えない高貴なたたずまいであった。

朝護摩では、お坊さんがお経をとなえながら煩悩に見立てた薪を燃やしていた。じっと火を見ていると大分気が紛れる。朝護摩が終わる頃には吐き気も無くなっていた。

その後は部屋に戻って時間が経つのをひたすら待った。田崎との会話もあまり無い(というかアイツは2度寝した)。

昼前になってから散歩に出た。昨日よりも階段を昇るのがつらい。そこら辺のおじいちゃんより歩行速度が劣っている。散歩では、「平和の大塔」と書道美術館に見学に行った。歴史を感じた。他に特筆するべきことは無かった。書道美術館に至っては何が書いてあるかも読めない。今日は仏教図書館は休みであるため、マンガを読んでの暇潰しはできない。

そういえばLoLのCBTサーバの開設から今日で1週間経つ。結局ガッツリ楽しめたのは2日程だった。開設期間は1週間前後だと聞いているので、そろそろ終わってしまうのではないか。

断食修行者が寝泊まりする建物の近くの広場には屋台が並ぶ。散歩に行くにも何をするのにもその広場の前を通るので、その度に食欲を刺激される。たこ焼き、フライドポテト、べっこうアメ、たい焼き、大判焼き、チョコバナナがあった。クレープと鳥ステーキが無いのは-10点だな。

外で日に当たりながら読書をしていた田崎が部屋に戻ってきた。

彼はにゃんちゅうのような鳴き声(例:に”ゃ”お”お”ん”)をあげながら布団に転がり込んで来た。コイツも追い詰められているな。

15時になったら坊主の話があるはずだが坊主が来ない。世話人の方も何の連絡ももらってないらしい。ドタキャン坊主め。外で待たされるのは寒いぞ。

夕方を迎えてからは、部屋に置いてある本を読んで過ごした。ここにあるものは、仏教関連か辞典ぐらいしかないが、ちゃんと読んでみようとすると案外面白い。特に、東洋医学の歴史についてや、三大宗教から見た「死」の捉え方の話などは、とても勉強になった。

外も真っ暗になったころ、田崎が布団の中から体調不良を訴えた。私も昼ごろから胃液がこみ上げてきたリ、こめかみを万力で締められるような頭痛を覚えている。今夜か明日辺りが山場だろう。昨日から今日の昼ぐらいまでは、30秒に1回は食べ物のことを考えていたが、こみ上げ期に入ってからは3分に1回程度のペースになった。

体調不良が本格化します。今となってはお坊さんもお忙しいこととは存じておりますが、当時は腹も減ったし外は寒いし世話人の方にも連絡しないしということでわりかし辛かった記憶があります。書道美術館などは、凄いということは分かりますが私自身に学がなかった。悲しい。屋台の話についてですが、私は地元の花火大会に出てくる頭がおかしくなるほど濃い味付けの鳥ステーキと下に敷かれたタップリのキャベツの千切りが大好きです。でも某お寺の屋台にはありませんでした。あったところで食べれませんが。


3日目

2/12 断食3日目 自画像でもなさそうな人「今日を乗り越えたら勝ち!」 体重:56kg

米俵のような固さを誇る枕に苦心しながらなんとか起床。今日でようやく3日目を迎えた。朝護摩に向かう途中でまた猫と出会った。今度は4匹に増えていた。存分に愛でたいが、時間がないので軽くあいさつだけして本堂へ向かった。しかし、いつも決まった時間に門の所に居るので、もしかしたら神が猫に化けて下界に降り立たれたのでは、と一瞬思った。私もこの3日間で少しは信心深くなったのかもしれない。(お不動様が猫に化けるのかは知らない)

朝護摩を終えて少し寝てから、図書館でマンガを読んだ。例のおっちゃんに例のごとく絡まれた。あの人はいつも自分が食った美味いモノの話をする。これは軽いいやがらせだ。まあ、図書館務め(しかも仏教図書館)も相当ヒマなんだろう。

図書館では1日目に読んだ「Happy!」の続きを読んだ。登場人物は大体クズなのだが、最終巻に近づくにつれて次々に改心していったのは笑った。途中、坊主のお話の集合場所に行ったが、今日も無いとのことだった。今度は世話人に連絡がいっていたようなので許した。その後はまた図書館に戻ってマンガを読んだ。図書館の閉館時間に合わせて帰る時に、おっちゃんに世話になったあいさつをした。すると、今日話していた美味いマーボー豆腐の店の住所等が書かれたメモを渡してくれた。どうやら私たちがマンガを読んでいる間に調べてくれたみたいだ。良い所あるじゃないか。許した

門限の18時になったので部屋に戻った。もうここまで来れば寝て起きたら重湯が待っている。それが励みだ。

小便をしたらヒザがそれはもうガックガクふるえたこみ上げも来た手や足も青い。これは割とヤバいな。3泊4日でよかった。当初の予定では6泊7日だった。そんなにやってたら私は4日目あたりで脱走してそこらの店で寿司を食いまくっていただろう。今回の断食はとても貴重な体験になったが、二度とはやりたくないな

お坊さんや図書館のおじさんを許すようになります。何様なんだ。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、体重を見ると1日1kg減っています。これはすごい。3日目にして、こみ上げの原因が水であることに気が付いた記憶があります。私が参加した断食修行では、お水を1日に定められた杯数飲んだかがチェックされますが、空腹を誤魔化そうとして一度に多量に摂取するとこみ上げるようです。


4日目

2/13 断食4日目 お坊さんと思われるキャラクター「よく頑張ったな」 体重:55kg

昨日の夜は吐き気のピークだったが、なんとか耐えて寝た。今日の朝は暖かく、さわやかだった。日課の朝護摩を終え、部屋の片づけをしたら、待ちに待った重湯タイムだ。

時間になったので、世話人の所へ行き、重湯と梅干し、焼きミソと温かいお茶を頂いた。一口重湯を口へ運んだ瞬間に、お米本来の甘みが口の中に広がる。梅干しも普段食べる時より何倍もすっぱく、ミソも何倍もしょっぱかった。3日間の断食で、味覚がとても鋭くなったようだ。おかわりを3回ほどして、3日ぶりの食事を終えた。今までの苦労の全てが報われたような気分になれた。

食事を終えた後は田崎と軽い話をしながら退堂の準備をした。2人とも大声で笑うぐらいには元気になっていた。この4日間で一番声がデカい。

後は世話人の方にあいさつをして帰るだけだ。この4日間、大した娯楽も無く、時は間延びして永遠にも続くかのように思われたが、終わってみるとあっけない。「ノドもと過ぎれば熱さを忘れる」というヤツだろうか。

今回はとても良い経験をさせてもらった。あの重湯や梅干し、焼きミソやお茶の味と感動を私は忘れない。

ただ、もう二度とやりたいとは思わないな。やっぱり。

今回参加した断食修行では、3泊4日以上の日程で終えると、重湯を頂くことができます。3日半ぐらいの間、水と屋台の匂いぐらいしか口に入れていない状態で食べる食事は未体験の領域でした。何倍にも鋭くなった味覚が、食物から得られる刺激をいっぱいに受け止めます。あの日の重湯は滅茶苦茶美味かったです。


振り返ってみて

読み直してみると、結構懐かしい気持ちになりました。また、断食修行で感じた、食べ物への感謝の念や飽食の時代への視点が思い起こされました。日記の結びには、「もう二度とやりたいとは思わない」と書きましたが、2泊3日ぐらいならもう一度やってみてもいいかもしれません。皆さんも一度体験してみてはいかがでしょうか。1日1kg痩せます。

ちなみに、帰りの駅で酸っぱいグミを買って食ったら刺激が強すぎて覚醒した味覚が失われました。短い夢だった。

 

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